CONSTRUCAO

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CONSTRUCAO(1971)

 冒頭の"DEUS LHE PAGUE"から不穏な雰囲気に満ちたサウンドが流れ、シコ・ブアルキの押し殺した歌声が聞こえて来る。さらに聴く者を不安に巻き込むようにパーカッションの重々しい連打が響き渡る。このアルバムは、あきらかに今までのシコ・ブアルキのアルバムとは違う。

 続く"COTIDIANO"でも重苦しく悲しげな影はついてまわり、アルバムのタイトル曲である"CONSTRUCAO"では、暗く愁いのあるメロディにのせてレンガ職人の墜落死が歌われる。シコはこのアルバムで失望や悲劇に満ちた現代社会を真摯なまなざしで歌っている。地味で穏やかな歌い口とは裏腹に、ここでのシコは他のMPBのアーティストの誰よりも過激だ。

 今までのシコとは違うとはいえ、あくまでもシコの美しいメロディは健在だし、上品な雰囲気のサンバも楽しめる。

 哀愁のある美しい"OLHA MARIA"や"VALSINHA"には思わずため息が出るほど。かと思うと、心躍るような雰囲気のサンバ"SAMBA DE ORLY"も聴くことができる。

 このアルバムは、シコのシリアスな表現力とともに、音楽も美しく充実した、実に聴きごたえのある名盤だと思う。