VIDA

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VIDA(1980)

 シコ・ブアルキのソロとしては10枚目になるアルバム。タイトルは「人生」というシンプルなもの。ここでシコは自分の人生を振り返ってみたのだろうか。

 ブラジルの軍事政府から反体制人物として目をつけられ、イタリアへの亡命を余儀なくされ、帰国後は政府の検閲から、放送禁止や発売禁止という作家生命を奪われかねない目にあわされてきた。

 それでもシコは負けなかったし、ブラジル国民の口からシコの歌が消えることはなかった。みんなはシコをブラジル国民の味方だと知っていたし、シコの行動から誠実さをちゃんと感じ取っていたんだと思う。

 愁いのあるメロディにのって切実に歌う"VIDA"から始まり、どの曲も優しく美しく楽しく時に悲しく聴こえてくる。これがシコの歌なのだとあらためて思う。どれもシンプルだけど味わいのある作品がそろっている。

 優雅で悲しげなメロディが印象的な"BASTIDORES"や"QUALQUER CANCAO"などは、同年代の他のMPBのアーティストには作り出せないような成熟を感じさせる。哀切な雰囲気から徐々に盛り上がりをみせる"FANTASIA"の素晴らしさも感動的な出来だ。どれも充実した出来の作品ばかり。

 アントニオ・カロルス・ジョビンとの共作になる"EU TE AMO"や、ホベルト・メネスカルとの共作になる有名な"BYE BYE, BRASIL"も収録した、実に素晴らしい出来のアルバムだと思う。