CHICO BUARQUE
ソロ・アルバムとしては9作目になるこの作品は、タイトルに自分自身の名を冠したもので、シコの自信のあらわれと見ていいだろうか。とにかく、このアルバムも素晴らしい作品でいっぱいなのだ。
ジルベルト・ジルとの共作となる"CALICE"を、シコはミルトン・ナシメントと一緒に歌っている。この曲は、カトリックの「聖杯」と軍事政権の「言論統制」の二重の意味をタイトルに含ませた作品で、美しいメロディにのってブラジルの軍事政権と国民の苦しみを描いたもの。このアルバムの聴きもののひとつだ。
エルバ・ハマーリョが歌うO MEU AMOR"も、シコ一流の胸をしめつける美しいメロディを持った愛の歌である。ジジ・ポッシとのデュエットが聴ける"PEDACO DE MIM"も同様に美しい。
どうしてこんなに美しいメロディばかりつくり出せるのだろうか。この時期のシコの作曲能力は、あきらかに他のアーティスト達から抜きん出ている。
かと思うと、"HOMENAGEM AO MALANDRO"や"ATE O FIM"などの陽気な魅力の歌もしっかりと楽しめる。名曲"TANTO MAR"も収録されているし、ブラジル政府の検閲から禁止された"APESAR DE VOCE"もここに収録。シコ・ブアルキの偉大さを実感できるアルバムだと思う。