PARATODOS

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PARATODOS(1993)

 すべての人のために"PARATODOS"と題された、このアルバムのジャケットには、ブラジルに住んでいるあらゆる人種の人たちの顔写真が写されている。

 ジャケットの中央にはシコ・ブアルキの顔写真が配置されているが、これは、過去にシコがブラジルの軍事政権から検閲を受けていた時の身分証明書の写真だろう。シコの正面を向いた顔の下には番号が打たれている。

 軍事政権の時代がが過ぎ去って10年がたち、シコはここでまた自分自身とブラジルの人々のことを振り返って見たに違いない。ブラジル音楽の偉大な作家や歌手を讃える歌があったり、ブラジル音楽のショーロやサンバに対する愛情を見せた曲もある。アントニオ・カルロス・ジョビンとの共作も収められており、ジョビンのピアノと歌声が聴けるのも嬉しい。

 タイトル曲では、アントニオ、ドリヴァル・カイミ、ジャクソン・ド・パンデイロ、ネルソン・カヴァキーニョ、ルイス・ゴンザーガ、ピシンギーニャ、ノエル、カルトーラ、カエターノにジョアン・ジルベルト、エラズモ、ベン、ホベルト、エルメート、エドゥ、そしてナラにガル、ベターニアなど、ブラジル音楽の大物たちの名前が歌われていて聴いていて楽しい。

 サンバへ帰ろうと歌った"DE VOLTA AO SAMBA"はシコらしい魅力がいっぱいだし、穏やかなメロディが魅力の"FUTUROS AMANTES"などは、じっと聴いていると美しい演奏に吸いこまれそうな感じがする。

 エドゥ・ロボとの共作になる"SOBRE TODAS AS COISAS"は、愁いのあるメロディがとても美しい作品だ。