CHICO CANTA

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CHICO CANTA(1973)

 このアルバムのジャケットは、発売当初は何の絵柄もない真っ白なものだった。当時のブラジル政府の検閲にかかって、このアルバムのジャケットで発売することは認められなかったという。

 シコが1968年に「ホーダ・ヴィヴァ」という芝居を上演した時から、シコの作品は政府の検閲から目をつけられていたようで、イタリアの亡命からブラジルに戻った1970年以降も、多くの曲が検閲を通らなかったという。

 このアルバムもジャケットからいわくのある作品であるが、内容はもちろん優れたものになっている。インストゥルメンタルの部分に当時の新しいサウンドを感じることも出来るが、やはりシコらしい楽曲を聴けるのがいちばん嬉しい。

 けだるい哀感のこもった"CALA A BOCA, BARBARA"や"BARBARA"など、シコらしいメロディに聴き惚れてしまうし、"FADO TROPICAL"もポルトガルのファドを思い起させるメロディがいい。"TIRA AS MAOS DE MIM"も同様に悲しみが滲み出てくるようなメロディだ。

 明るいラテン調の"NAO EXISTE PECADO AO SUL DO EQUADOR"も聴いていて楽しい。この曲はブラジルの個性的なシンガー、ネイ・マトグロッソが好んで取り上げている作品である。