CHICO BUARQUE DE HOLLANDA VOL.2

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CHICO BUARQUE DE HOLLANDA VOL.2(1967)

 シコ・ブアルキのソロ第2作目となるアルバム。デビューアルバムと同様、ブラジル音楽の魅力をしっかりと伝えてくれる。初期のシコを聴くうえで絶対にはずせない傑作だと思う。 

 冒頭の"NOITE DOS MASCARADOS"から、シコの美しいメロディと温かみのある歌声に思わず引き込まれてしまう。たしかに、今の耳で聴くとアレンジや演奏面に時代を感じるところもあるのだが、聴いていると当時の雰囲気がよみがえるようで、それすらも魅力になっていると思う。

 "QUEM TE VIU, QUEM TE VE"は忘れられない1曲で、聴くたびに胸がしめつけられてしまう。この曲は若い男の悲恋を歌ったもので、いつも道ばたで一緒にサンバを踊った美しい混血娘が、いつのまにか手のとどかない存在になってしまったことが歌われている。

 今日もサンバがはじまるけれど、彼女はお金持ちの特別観覧席にいる。道ばたでサンバを踊っていたとき、彼女はいちばん輝いていたのに。大通りでサンバをする僕を見かけたなら、懐かしいなどと思わないでくれ。気づかないふりをしてくれ。

 サンバのはじまる大通りの熱気と喧噪のなか、哀切に満ちたメロディが流れはじめる。若い男のコンプレックスと美しい娘への届かない思いを、サンバの情熱にのせて、切々と歌いついでいくシコの表現力は実に見事だ。

 トッキーニョとの共作で愁いのある"LUA CHEIA"や、シコの初期の傑作で漂うようなメロディの"MORENA DO OLHOS D'AGUA"など、美しい作品はもちろんのこと、アルバムを通してサンバのリズムの魅力も感じられる。ブラジルの伝統的なショーロを取り入れた作品も収められている。