CHICO AO VIVO

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CHICO AO VIVO(1999)

 シコ・ブアルキのライヴ盤である本作は、スタジオ録音盤の"AS CIDADES"の発表後に行ったコンサートの模様を収録したものである。

 CDで2枚組の内容で、過去のシコの名曲が多数収録されているが、いわゆるベスト的な選曲ではなく、最近のアルバムである"AS CIDADES"や"PARATODOS"の作品も多く収録されている。

 演奏の質が高いことと、シコの実に落ちついたパフォーマンスから、とても安心してゆったりと音楽を楽しむことができる。ブラジル音楽のリズミカルな演奏と魅力的なメロディの数々は、いつまでも聴いていたいと思わせるほど。観客の反応も素晴らしく、熱の入った大合唱などを聴いていると、シコの人気のほどが充分にうかがえる。

 このアルバムのブックレットを見ていると、ステージのセットが都市や建築をイメージさせるものとなっていることに気づく。"AS CIDADES"もそうであるが、シコの作品には建築を連想させるタイトルのものがある。シコは大学時代に建築を学んでおり、今でも建築に対する興味や関心が強いのだろう。

AS CIDADES

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AS CIDADES(1998)

 このアルバムのジャケットは、シコ・ブアルキの顔写真をCGを使って様々な人種の人につくり変えたもの。ブラジルに住む人々のことをテーマにしていることをカヴァー写真を使って表しているのだろう。

 アルバムの内容はとても素晴らしいもので、シコのつくり出す楽曲はもちろん、アレンジから演奏まで、とても洗練されていてクオリティが高い。

 シコの手になるものでは"IRACEMA VOOU"や"SONHOS SONHOS SAO"をはじめとして、"A OSTRA E O VENTO"や"ASSENTAMENTO"などなど、どの曲もメロディアスで美しく親しみやすいものばかり。哀感をメロディに織り込んでいく、シコの才能をあらためて実感できる内容だ。

 ドミンギーニョスとの共作になる"XOTE DE NAVEGACAO"は、ブラジル北東部の音楽でおなじみのアコーディオンの響きとメロディがもの悲しい逸品で、見事に聴く者の心の琴線に触れる。

 他に貴重な共作としては、ギンガとの"VOCE, VOCE"を挙げておこう。ルイス・クラウヂオ・ハモスとの共作になる"CECILIA"も美しい作品である。

 ラストをマンゲイラを歌ったサンバでしめくくるのもシコらしい。

TERRA

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TERRA(1997)

 このアルバムは、ブラジルの有名な写真家であるセバスチャン・サルガドの写真集に添えられていたCDアルバムである。

 セバスチャン・サルガドはシコ・ブアルキと同い年で、やはりシコと同様に当時のブラジル軍事政権の弾圧から国外へ亡命した経験を持つ人物である。音楽と写真という分野の違いはあれ、シコとも交流があったのであろう。

 このアルバムには、シコの作詞作曲になる作品と、ミルトン・ナシメントとシコの共作になる作品が収められている。冒頭に収録された"ASSENTAMENTO"は、この後、シコがソロ・アルバム"AS CIDADES"に収録する美しいメロディの作品である。

 ミルトンとの共作になる"LEVANTADOS DO CHAO"は、ミルトンらしい独特の愁いのあるメロディが魅力の作品である。

 ラストに収録された"FANTASIA"を聴きながらジャケットをながめていると、シコの悲しげな歌声が、何かを訴える少女の瞳と重なってくるような気がしてならない。

CHICO BUARQUE DE MANGUEIRA

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CHICO BUARQUE DE MANGUEIRA(1997)

 マンゲイラのシコ・ブアルキと題されたこのアルバムは、シコがブラジルで最も伝統的なサンバ学校であるマンゲイラを讃えたもので、シコのサンバへの愛情があふれる作品になっている。

 エスタサォン・プリメーラ・ヂ・マンゲイラという名前のサンバ学校をつくったのは、カルトーラやカルロス・カシャーサであるが、このCDアルバムのブックレットを開くと、カルロス・カサーシャカルトーラ、そしてシコが肩を組んだイラストが添えられており、このアルバムの主旨を簡潔に表している。

 シコのほかに、このアルバムに参加しているのは、アルシオーネ、ジャメラォン、レシ・ブランダォン、ネルソン・サルジェント、ジョアン・ノゲイラといった面々で、ブラジルの人々が愛するサンバを魅力一杯に表現してくれている。

 カルトーラ、ネルソン・サルジェント、ネルソン・カヴァキーニョらの作品が次々と歌われていき、味わいのあるサンバをじっくりと楽しめる。

 シコがソロ・アルバム"PARATODOS"で、アントニオ・カルロス・ジョビンと共作したマンゲイラ讃歌"PIANO NA MANGUEIRA"もここに収められている。

 アルシオーネが味わい深く歌う、シコの"ESTACAO DERRADEIRA"も収録されていて、個人的にもお気に入りのアルバムである。

ALBUM DE TEATRO

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ALBUM DE TEATRO(1997)

 エドゥ・ロボとシコ・ブアルキが、舞台のために書いた作品を収録したのがこのアルバムである。冒頭からいかにもミュージカル風の音楽が流れて、エドゥとシコの歌声が聴こえてくる。

 このアルバムでふたりの他に歌声を披露しているのは、レイラ・ピニェイロ、エジ・モッタ、イヴァン・リンス、ジルベルト・ジル、ガル・コスタ、ジャヴァン、ネイ・マトグロッソミルトン・ナシメント、ジジ・ポッシ、ダニーロ・カイミ、ゼー・ヘナートといった有名どころである。

 それぞれが割り振られた作品で歌声を披露しており、ブラジル音楽好きならすべての曲をじっくりと楽しめるアルバムである。ちなみにヴィオラォン(ガットギター)ではギンガも参加している。

 やはりここでも、ミルトンの歌声が"BEATRIZ"で至高の美しさを振りまいている。ミルトンが「ブラジルの声」と呼ばれる理由がこの歌を聴けば理解できるだろう。もちろん、ジジやジル、そしてネイの歌声も美しい。

 このCDアルバムのアートワークはいささか凝った作りになっている。エドゥとシコが並んで写っているブックレットの表面は薄い半透明のシートになっており、後ろの劇場の写真が透き通って見える仕組みである。