SINAL FECHADO

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SINAL FECHADO(1974)

 ブラジル政府のシコ・ブアルキに対する検閲は非常に厳しく、74年から75年にかけて、シコの作るすべての曲は禁止され、レコードをつくることもままならない状況にあった。74年に発表されたこのアルバムは、シコが他のアーティストたちの作品を歌ったカヴァー曲集なのである。

 収録されているのは、カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、ノエル・ホーザ、トッキーニョ、ネルソン・カヴァキーニョ、アントニオ・カルロス・ジョビン、ドリヴァル・カイミ、パウリーニョ・ダ・ヴィオラなど、ブラジルの有名なアーティストの手になる作品の数々。

 ひときわ輝いている作品は、ジルベルト・ジルの"COPO VAZIO" ノエル・ホーザの"FILOSOFIA" トッキーニョの"O FILHO QUE EU QUERO TER" アントニオ・カルロス・ジョビンの"LIGIA"などで、中でもパウリーニョ・ダ・ヴィオラの"SINAL FECHADO"や、ドリヴァル・カイミの手になる"VOCE NAO SABE AMAR"は、一聴して虜になってしまうほどの魅力がある。

 アルバムのクレジットの中に、ジュリーノ・ダ・アデライヂという見慣れない名前があり、警察の恐ろしさを歌った作品が収められているが、実はこの人物がシコ・ブアルキ本人だったことが後に発覚する。以降、検閲官に送られる楽曲には作者の身分証明書が必要になったという逸話がこのアルバムにはある。

 アルバムのタイトルとなった"SINAL FECHADO"は「危険信号」という意味で、作者のパウリーニョ・ダ・ヴィオラがブラジルの独裁政府による暗い時代を歌ったものである。